アクセシビリティ対応は、ユーザーが快適に利用できるウェブサイトを目指す上で欠かせない要素です。特に公共機関や幅広いユーザー層を対象とするウェブサイトでは、アクセシビリティの対応が一層重要視されています。
こうした観点から、ウェブサイトのデザインを担うデザイナーは、デザインの知識だけでなく、アクセシビリティの視点を理解し、それをデザインに反映できる知識とスキルが求められます。しかし、現状としてアクセシビリティに関する詳細な知識を持つデザイナーは少なく、デザインを外注する際には、要件やゴールを明確に伝えなければアクセシビリティ対応が十分に行われないこともあります。
本記事では、外部のデザイナーにウェブアクセシビリティ対応の目標を持ったウェブサイトのデザインを依頼する際に、円滑にコミュニケーションを取り、アクセシビリティの目標を達成するためのポイントを説明します。
あらかじめ定義しておくこと
アクセシビリティを意識したウェブサイト制作を行うために、まずプロジェクトの目標となるアクセシビリティ基準を明確に設定し、その内容をチーム内で共有します。この目標は、「WCAG(Web Content Accessibility Guidelines)」の達成基準や業界ごとの法的要求に基づき定めると良いです。
あらかじめ達成すべき具体的な項目を定義しておくことで、デザイナーやプロジェクトメンバーにとって必要な対応が明確となり、設計段階で適切な配慮が可能となるため、アクセシビリティ対応をしたサイト制作をする上で重要であると言えます。
達成するアクセシビリティレベルの明確化
WCAG(Web Content Accessibility Guidelines)」の達成基準であるA、AA、AAAの3つの基準の中から、プロジェクトにもっともふさわしいレベルを明確にします。「レベルA」は最も低い適合レベルで、基本的かつ優先度の高い基準ですが、レベルAAAが最も高い適合レベルで、実装難易度が高く、比較的優先度の低い基準とされているので、このレベルによってアクセシビリティ対応の幅が大きく変わります。一般的にはレベルAAまでの達成を目指すことが推奨されているため、先方からの強い要望等がないようであればレベルAAを選択すると無難です。
- レベルA:ウェブアクセシビリティを確保するために最低限達成するべき状態
- レベルAA:ウェブアクセシビリティが十分確保できている状態
- レベルAAA:非常に高いウェブアクセシビリティが確保できている状態
これらのレベルのいずれを目標にするかを明確にすることで具体的な達成方法を理解し、プロジェクト全体が同じ方向を向くことができます。目標設定時には、クライアントの要望や対象ユーザーの特性を配慮し、最適な達成レベルを設定します。
具体的な要件の明文化
プロジェクトを進める上で、アクセシビリティに関する具体的な要件を文書化し、プロジェクトメンバー内で共有します。文書化をすることで、実装段階での解釈の違いを防ぎ、プロジェクト全体に渡り一貫した対応が可能となります。
代替テキスト、色のコントラスト比、キーボード操作対応などの基準や上記で定義したレベルも含めて具体的な要件を明文化し、対応すべきことを明確化、また、要件を共有する際はわかりやすくリスト化や視覚的なサンプルを用意し、誰でも理解しやすい形に整えることが望ましいです。
デザイナーに必要な情報を適切に伝えるにはどうするか
目標が設定された後は、その内容をデザイナーに具体的かつ的確に伝えます。特に外注先のデザイナーにはアクセシビリティに関する知識や理解度が異なることを念頭に置き、必要な情報をわかりやすく提供することが求められます。
また、プロジェクトの進捗に応じて情報を小出しにするのではなく、包括的な理解ができるよう、整理された情報を早い段階で共有することでスムーズにデザインのやりとりを進められます。
アクセシビリティの重要性の共有
プロジェクトのキックオフミーティングや、初回打ち合わせでアクセシビリティ対応の目標とその重要性についてデザイナーに共有します。
アクセシビリティ対応とは何か、アクセシビリティ対応はなぜ重要なのか、ユーザーのニーズについても理解を深めてもらうことで、こちらが期待しているデザインの方向性を共有することができます。
具体的な影響を示す
視覚的な困難があるユーザーにとって、アクセシビリティ対応がされていないサイトは具体的にどんな不便があるのか、また視覚的な困難があるユーザーがウェブサイトをどのように利用しているのかを伝えることで、普段意識しにくいアクセシビリティ対応の重要性がデザイナーにも伝わります。
詳細なガイドラインの提供
デザインを外部に依頼する際は、アクセシビリティの要件を細かく定義した上でデザイナーに共有します。ガイドラインは、単なる仕様書ではなくデザインのどの部分にアクセシビリティ対応が必要なのかについても言及する必要があります。このガイドラインが具体的であればあるほど、理解がしやすくなるので、可能な限り具体的に記載をすると良いです。
具体的な基準を記載
具体的な数値や達成基準(コントラスト比などの数値や基準の詳細)を記載することで、対応すべき基準が明確になります。
- コントラスト比:達成基準1.4.3では、少なくとも4.5:1のコントラスト比が必要
- ホバーまたはフォーカスで表示されるコンテンツ:リンクやボタンなどにフォーカスが当たったことが視覚的にわかりやすいスタイルを設ける
- レスポンシブデザインの適用:画面サイズや向きに応じて自動的にレイアウトが適切に調整されるよう、レスポンシブデザインを設計する
視覚的なサンプルや事例の活用
アクセシビリティに対応したデザインは留意すべきポイントが多いため、文字のみの説明では伝わりにくいことがあります。そのため、視覚的なサンプルや具体例を提示し、デザイナーの理解を促します。
作成段階でのフィードバック機会の確保
デザイン作成が進行する中で、アクセシビリティ要件が守られているかを確認するためのフィードバックの場を定期的に設けます。これにより、デザインと要件が乖離することなく進行することができます。
まとめ
アクセシビリティ対応は、ユーザーの多様なニーズに応えるとともにユーザーが快適に利用できるウェブサイトを実現するために欠かせない取り組みです。外部デザイナーとアクセシビリティ対応の目標を持ったウェブサイト制作をする際には、具体的な目標設定や的確な情報共有、効果的な伝え方が非常に重要となります。
- 達成するアクセシビリティレベルの明確化
- 具体的な要件の明文化
- アクセシビリティの重要性の共有
- 詳細なガイドラインの提供
- 視覚的なサンプルや事例の活用
- 作成段階でのフィードバック機会の確保
本記事で紹介したポイントを踏まえ、デザイナーと密な連携をとって、アクセシビリティ対応の目標を達成できるようにプロジェクトを進めていきます。